うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

小説新潮9月号

8/22発売の「小説新潮」9月号の「恋と食べもの」特集に、「くちうつし」という題の小説を寄稿しました。

ややエロい感じのタイトルですが、エロ場面はありません(と思う)。自分がこんな話を書くとは思いがけず、でもずっと書きたかったテーマではあったので、書けてすごく嬉しかったです。しかししつこいけど当初こんな中身になるとは夢にも思っていなくてびっくり。

これを書きながら、自分が以下の作品から影響を受けていることがわかって面白かったのでメモしておきます。以下のラインナップになんとなくピンときたらぜひお読み下さい。ピンとこなくても面白いので読んで下さい。百合です。
初めてこんなに登場人物が少ないものを書きました。二人?いや三人?よくわからないので、読んで確かめて下さい!

 

(漫画)山岸凉子「鬼来迎」、同「日出処天子」

(映画)小林正樹「怪談」中の「雪女」
    ブライアン・デ・パルマ「キャリー」
    チン・シウトン「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」

あとはこの世の様々なゴーストストーリーから影響を受けました。書く前に読んだ本もいくつかありますが、意識して選んだそうした作品たちとは全然違うものになっていき、無意識から上記の作品の様々な場面が強く浮上してきたのが書いていてすごく面白かったです。

読んで気に入っていただけたら何らかの方法で教えて下さい。宜しくお願いいたします。

文庫化と今後のお知らせ

拙著『恋愛の発酵と腐敗について』が小学館文庫に入りました。
解説は中江有里さん。中江さんにはNHKで本書をご紹介いただいた上に、さらに解説まで書いていただけて本当に嬉しかったです。ご多忙中ありがとうございました。

単行本と同じく、装幀は名久井直子さん、装画は箕輪麻紀子さんです。
絵は同じですが、背がピンクになったり紙がつるつるになったり、だいぶ印象が変わりました。届いて開けたとき、かわいい!かわいい!と一人で興奮。今も机の上にあるのですが、見る度に「かわいい」と呟いてしまいます。

ぜひ書店で、小学館文庫の棚を探してみてください。

単行本リリース直後から、多くのメディアで取り上げていただき、ご紹介いただいたおかげで文庫になったと思っています。年末には思いがけず「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」にも推薦していただきました。また、これまで途切れず上がり続けているインスタを中心とするSNSやネット上のたくさんの感想、そして何よりも買ってくださったお一人お一人のおかげです。ありがとうございました。

正直、自分の本が文庫になるなんてことがあるとは夢にも思っていなくて、もしそれが可能になるとしたらもっともっと先だと思っていました。何か奇跡みたいなことが起きない限り、無理だと思っていました。
なのでこのたびの文庫化のお話をいただいても、なかなか信じられませんでした。ゲラが来ても、ほんとなのかな?とまだ思っていました。
AppleBooks先行を経て、単行本リリース、そして文庫で三度めのリリースになります。そのたびに改稿することになりました。
文庫に際しては、直すつもりは全くなかったのですが、組み直したゲラを読んでみると、なぜかどうしても書き直したい部分が出てきて、いくつかの場面をかなり変えました。でも、ストーリー的には変化はありません。印象はちょっとだけ違うかもしれませんが。
読後感がもっと良くなったように思うのですが、どうでしょうか。

というわけで、これが完全版になります。
たくさんの方に買って読んでいただけますように!!
そして、いつかデビュー作を文庫にしていただく夢も叶えたいです(悲願)。そのためには自分がこれから書くものがもっと世に出ること、そして多く読まれることが必要です。まだ新人なのでそれがなかなか難しいんですけれども。

最近、ずっと苦手意識のあった短編をついに書くことができました。しかも、ずっと書きたくて、でもどうしたら書けるのかわからなかった内容のものを。書いているあいだひたすら楽しくて、夢中でした。

来週出る「小説新潮」9月号に掲載予定ですので、詳細はまたTwitter等でお知らせします。すごく読んでいただきたい。そして感想を知りたい。

文庫も雑誌掲載の次作も、どうか宜しくお願いいたします。

綱渡りの日々は続く……。
自分にとって面白いものをもっと書きたい。そのためにもっと技術を磨きたい。
どうかこれからも見守っていただけたらありがたいです。

2022年の振り返り

あと一時間半で新年になってしまうので、ごく簡単に今年あったことを思い出せる限り書いておきます。

・2月に新刊の小説が出て、予想以上の反響があったことが最も大きなことでした。すぐに新聞各紙やテレビなどで取り上げていただき、本当に驚いたしありがたかった。
その上、12月には「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」にノミネートされたという知らせをいただき、受賞はかなわなかったけれど、いつか・・・という目標ができました。選考会の様子は『オール讀物』2月号に掲載されるとのこと。まさか2作目も選考対象になるとは予想だにしていませんでした!

・3月末に、NHKラジオ「らじるラボ」の木曜レギュラー出演を終えました。番組始まってすぐにコロナ禍となってほとんどスタジオに行けず、約2年間自宅2階の仕事部屋脇の小部屋を簡易スタジオにして、電話出演していました。電話台をテーブル代わりにして台本を置いて、椅子しか置けないほど狭い通路みたいな場所に座って喋っていたのです。まさかあんな物置みたいな場所から全国に向けてしゃべっていたとは、誰にも想像できなかったでしょう。家族だけがそれを面白がっていました。しかし自分がラジオに、しかも生放送に毎週出ることになるなんて、夢にも思っていませんでした。人生って不思議です。貴重な経験でした。2年間、毎週月曜朝までに台本の元となる原稿を2本書いて送るという生活を続け、担当のスタッフの方は立ち上げから変化しましたが、全ての方に感謝しています。聞いて下さった方、本当にありがとうございました。

「さくらひなたロッチの伸びしろラジオ」には、引き続き短歌の先生として今年も出していただきました。

・夏に引っ越しをしました。これが大変でした…。ラジオを辞めたのはたまたまでしたが、もしあのまま続けていたら絶対無理だったでしょう。

17年暮らした家(三階建て)に、好きなように家具や本など詰め込んでいたため、不要品の処分やら何やらに思っていた以上の時間と労力がかかりました。17年前と今の自分では生活スタイルも考え方も変わっていて(何より仕事が違う)、「いつか使うかも」ととっておいた物のことごとくが、もういらないのでした。要するに、「いつか」なんてもう来ないのです。いやー、本当に大変でした。引っ越しのトラウマで、処分が楽かどうか気になって必要な物さえなかなか買えなくなってしまいました。本をKindleでよく買うようになってしまったのも、引越しのせいです。

引越しが終わったあと、部屋が本の段ボールで天井までぎっしり埋め尽くされて寝る場所しかなかったのはしんどかったです…。引越しお任せパックみたいなサービスで箱詰めはやってもらったんですが、出すのは全て自力だったので、重労働でした。次は絶対本だけは収納まで頼む!!と決意。

・新居は我ながらよく見つけたと思うような、静かでいい場所にある良い家なのですが、これで心機一転いいものがどんどん書けるようになるかというとそんな甘くはなく、引っ越しダメージのせいなのかなんなのかわからないけどメンタル的な何かがうまくいかない感じで困っているところ。書き下ろし一つ終わったけど出す目処がまだ立たず。2作目の評判が良かったおかげで話はいくつも来ているのだが・・・。今こそ願っていた状況なのに、なぜうまくいかない?と絶望的な気持ちになったり。

そんなわけで今年はやるべきことができなかった感じがあり、来年こそがんばりたいと強く思うのでした。

・今年は去年ほどコロナに怯えて暮らしてはいなかったけれど、去年と違った意味でコロナによる良くない影響を年末に至って強く感じ始め、それは欲望ややる気みたいなエネルギーがじわじわ減っていくような感覚で、このままではまずい、と積極的に12月は人に会うようにしました。少しだけど。

本当にしたいことを来年は諦めずに、自分を信じたい。

 

最後に、Twitterにも書きましたが、今年映画館でみた中でよかった10本をメモしておきます。

・ユンヒへ
・春原さんのうた
・コーダ あいのうた
・ふたつの部屋、ふたつの暮らし
トップガン マーヴェリック
・PLAN75
・LOVE LIFE
・あのこと
・ファイブ・デビルズ
・そばかす

「ユンヒへ」は映画館で二度みて配信になってからもう一度みて、いずれも同じところで泣きました。配信でみた中では、「ソウルメイト七月と安生」がものすごくよかったです。もう一度観ると思う。

 

 

ナウシカ歌舞伎

久しぶりに歌舞伎座に行きました。

歌舞伎を見たのは、コロナ禍以前の2019年末に新橋演舞場ナウシカ歌舞伎昼の部夜の部を通しで見たとき以来。
今回もナウシカ歌舞伎を見に行きました。どんだけナウシカ好きなのか(;^^)ヘ..

歌舞伎座は今までのような昼と夜の二部制ではなく、三部制になっていた。一部の時間が短い。けど楽でいいかも。席でお弁当を食べることはできなくなり、客席はまだ二人おきに間をあけて販売。大丈夫なのか心配になる。大向こうの声もないし、精一杯手を大きめに叩きながら、観ました。

尾上右近さんの口上で始まった今回のナウシカ歌舞伎。そういえば、前回みたあとにラジオ番組で右近さんと電話越しながらお話させていただいたんだった……まさか自分の人生に右近さんとお話するなんてことがあるとは想像もしなかった……と不思議な気持ちに。得がたい経験だったな。

やはりコロナの影響をそこかしこに感じながらも、腐海を表現する舞台美術は前回以上にすばらしかったし、そこにあのテーマ音楽とともに「風の谷のナウシカ」の文字が浮かびあがったときは、前回同様胸が熱くなりました。(ナウシカ好き過ぎる人)

今回一番思いがけなかったのは、王蟲の精が踊る場面で泣いてしまったこと。演じた8歳の尾上丑之助さん、すばらしかったです。王蟲の精を表現するなんて、すごく難しいと思うけど、今の年齢でしかできない踊りだった気がする。目が釘付けに。
王蟲の孤独と、歌舞伎役者の家に生まれた子の特別な時間が重なって、稀有な聖性が発生している感じがした。これからすごい役者になるんじゃ……?それが観られただけでも行ってよかったと思いながら帰ってきた。

それが金曜日。元首相が暗殺された。選挙に大きな影響を与えることになる。最悪。当分SNSはみないことにしてニュースをラジオで聴く。歌舞伎を時々みたり、大好きな夏服を買ったりできるような日々は、いつまで続けられるのかな。

恋発(拙著です)を読んでくださった方々の感想に、ことごとく「なんだか元気になった」みたいなことが書いてあり、救われる。それは予想外のことだった。次作がなかなかうまくいかないが、なんとかしてがんばっていく。

渡邉理佐さん卒業コンサートに行った

以下は櫻坂46と欅坂46ファン以外にはよくわからない話ですし、私の独りよがりの感想なのですが、忘れたくないのでここにメモしておきます。さっきTwitterに書き始めたら、とても140字に入らないどころかツリーが超長くなってしまうとわかったので、ここにコピペ。

理佐さん推しじゃなくても行ってもいいのかなって少し迷ったけど、1期生には強い思いがあるので初日だけ現地に行くことにしました。行って本当によかった。欅の曲も最後に少しはやるかなとは思っていたけど、あんなにすぐ、あんなに何曲もやると思ってなくて。二人セゾンが始まって涙がぼろぼろこぼれて止まらなくなった自分にびっくりしたけど、やはり音楽って本当にすごい。体がこれまでの記憶を勝手に蘇らせてあのときの場所や感情やあのときに見たあの子やこの子やたくさんの今ここにはいないけどかつて一緒にあそこにいて歌って踊っていたメンバーたちの姿が浮かんでは消えました。涙ぼろぼろなのに手は勝手にペンラを振っていて、その自動的に曲に合わせて動いてしまう自分の腕、自分の体に刻み込まれていまだに忘れられないたくさんの記憶の全てが、ああ、走馬灯のようにってありふれた比喩があるけどどんな感じなのかよくわからんなとずっと思っていたけど、こういう感じなのかって生まれて初めて知った。


音楽ナタリーのインタビュー受けた2018年夏に、てちがやめたら欅を好きでいるかどうかはそうなってみないとわからないって確か答えて、本当はその時内心ではてちがいないとファンじゃなくなるだろうなってかなり思っていたけど、昨日のライブではっきりわかりました。誰がいるとかいないとか関係なく私は欅坂46がすごく好きだったんだ。理佐さんが選んだ曲を通して見聞きしたこの二日間の欅坂46のパフォーマンスは、理佐さんの好きだった欅の世界。理佐さんが主人公になった楽曲達。それを見られて本当に良かったです。理佐さんには理佐さんの、私には私の、みんなそれぞれに好きな欅坂の物語があって、そのどれもが欅坂だし、そのどれもが大切。

「そのどれが欠けたって永遠は生まれない」(「二人セゾン」)

理佐さんの希望がたくさん反映された卒業コンサート。欅坂の頃にはなかったので、私にとっては初めての「卒コン」でした。まさかもう一度ペンライトを緑にする日が来ると思っていなかった。緑の光に染まったライブ会場は本当に綺麗でした。改めて、欅坂46がみんなで何をどんな風に作っていたのか、さらにわかった気がしました。理佐さんが別れ際に教えて下さったことを忘れたくない。今までありがとうございました。これからの理佐さんの活躍と幸せを祈ります。

サイトを作りました

いつ以来か忘れてしまったくらい久しぶりに、個人サイトを作りました。

Eriko Nishikimi (amebaownd.com)

このブログもリンクしてあります(一番上)。

今後はブログを更新したら、トップのお知らせにも載せます。

まだGoogleで名前を検索してもサイトが上がってこないので、しばらくはサイトのお知らせとブログで情報が重複することもあるかもしれませんが、宜しくお願いします。

 

責了、そしてリリパ

本日、『恋愛の発酵と腐敗について』が責了になりました。けっこうぎりぎりまで直しちゃったけど、もうこれで自分は何もできない。あとは待つだけという段階に入りました。気づいたらあと一ヶ月。

リリースパーティをしたいなと思っていますが、オミクロン株が猛威をふるっている状況ですし、静かなホームパーティ的なイメージで、ラジオアプリ(stand fm)を使って一人でお話しようかなと思っています。

質問をいただけたらしゃべりやすいので、以下にお送りいただければありがたいです。すでに配信で読んで下さった方はもちろん、未読の方も、小説に関係することでしたら何でも結構です。

marshmallow-qa.com

これ、匿名で誰でも送れるようになってると思うんですが……どうでしょう……できますか?

質問ぜんぜん来なくても、誰も聴いてなくてもやりますけれども。あると励みになりますので、宜しくお願い致します。

今のところ、リリース予定日のバレンタインデーにわーい\(^O^)/という感じの短いおしゃべりをやって、さらに買ったり読んだりして下さった方が出てきたあたりでまたやろうかなと思っています。
できればどなたかと対談やラフなおしゃべりもしたいので、お知り合いで、参加してもいいよ、という方がいらしたら、メールやDMなどでお知らせ下さい。こちらからお声掛けすることが性格的になかなかできないので、自分でもいいのかな?みたいに思ったりせずに、ぜひお願いします!知り合いならどなたでも、相手していただければ話しやすいので。

やってみないとどうなるかわかりませんが。
ひとまず今日は、質問受付のお知らせとお願いでした。