うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

ナウシカ

映画に出てきたかっこいい女の人を気に入るあまり、観た帰りにずっと、あの人と同じ髪型にしたいとか同じ服を着たい等、よく考える。当然自分に似合うわけがない(たいてい外国人だし)ので、翌日には目が覚めて諦めますが、要するに形だけでもその人になりたくなっちゃうわけです。

今までで一番気に入って、自分の残りの人生であの人になるためにはこれから何をしたらいいんだろう、と真剣に悩みながら帰ったのは、オンリー・ゴッドニコラス・ウィンディング・レフン監督)に出てきた、最後惨殺されるゴッドマザー(クリスティン・スコット・トーマスが演じていて滅茶苦茶かっこよかった)です。あの人を観るためだけにDVDを買いました。あの映画、ほんとに気に入ったけど、良さを説明しがたい。説明不能の映画を気に入ること、わりと多いです。

今日はそんなわけで、ナウシカと同じ髪の色にしたくなっています。 

初めて映画館で風の谷のナウシカを観たために。

ナウシカよりクシャナのほうが好きだと思っていたはずなのに、いやー、やっぱり姫さまかっこよかったな。たぶん今の状況のせいだと思うけど、絶望的な状況でも民に希望を失わせず最後まで信じ抜く力がものすごくて、なんてえらい姫さまなんだろうと思った。三回くらい泣いた。相当弱ってるね。でも、一つおいて隣の女の子もかなり涙を拭っていた。後ろに座っていた或る高校の制服を着た二人組の子たちも、終わるなり「やばかった」「やばいよね」を連発していて、「やっぱナウシカが一番いいよね」(ジブリ映画の中で)、と言っていた。映画館出るまで、好きなシーンを口々に語っていて楽しそうだった。参加したくなった。

で、映画館で観たら、微妙な色がきちんとわかった。ナウシカの髪の色がだいぶピンクがかった茶色でとてもきれいで、赤いピアスとも青い服ともよく似合ってすてきだったので、あの色にしたい…と思ってしまったわけです。ナウシカになりたいけどなれないので、せめて髪だけでも。

クシャナの、瞳の色とおそろいの額飾りとピアスも素敵だった。

明日になったら髪の色のことはまた諦めるんだろうけれど、「ナウシカ」の台詞はほとんど暗記しているので、あれに出てくる人たちみんな、自分の中にもう存在しているだろう。大丈夫だね(何が)。

ペジテのブリックから最後脱出して、雲の中からメーヴェに乗って迫り上がってくるナウシカ、映画館だと風圧まで感じられるようで、心ふるえた。メーヴェに乗るナウシカを体感する映画だったんだね。

虫たちの大きさとか腐海の深さとかも。腐海の底の清浄化された砂のきらめきも忘れ難い。

「 オンリーゴッド」のお母さんとナウシカの共通点は全く無いようだが、一つだけ、共同体のトップという点があるので、私はそういう人に自分を重ねがちなんだろう。それは家族関係や生育史と関わりがあるんだろうな。

東京の感染者数100人越え。

なのに街の様子は人々がマスクをしていること以外、以前と同じに戻ってる気がする。今日、三ヶ月ぶりくらいで外食したけど、前にも横にもしゃべりまくる人たちがいて、不安なので速攻食べて出てきた。パンケーキ。人の作ってくれたものは本当に美味しかった。