うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

ひぐらし日記

山の家に来た。やっと来れた。三月末以来だから、約四ヶ月ぶり。

三月に来た時に、急にうまく書ける状態になって、このままの感じで続きを書けばあと少しで終わるな、と安心して帰ったのだったが、甘かった。四月から生活のサイクルが変わってしまったことと、たぶん精神状態が不安に満ちているせいで、集中力が途切れがちになり、続きは思ったよりうまくいかなかった。そのためにまたしても苦心することになってしまって、こんなことになるならあのままどんなことをしてでも終わらせてから帰るべきだったと後悔したのだった。

ともかくまた来ることができて本当に良かった。

ここで少し休んで、安心できるといいのだが。

O駅で二日分の食料を買い込んだ。以前と変わらず山と積まれた野菜を買うことが躊躇われ、パック入りのを選ぶ。たぶん積まれてる方が新鮮だから、以前は迷わずそれを選んでいたが。うなぎの蒲焼きもたくさん並んでいて美味しそうだったけれど、それも晒されていたので買えず。東京よりだいぶ感染リスクに対してゆるめ? でも最近スーパーとかデパ地下とか行ってないから、東京ではどうなのかわからない。

いつものバスで一本で行こうとしたら、先日の豪雨のせいか通行止めで上がれないとわかって、別のバスで一度乗り換え、さらにケーブルカーを乗り継いだ。ケーブルカーには二人しか乗っていなかった。人がいなくて自分は安心だが、観光的には打撃だろうから心配。

マンションの周りの木々は鬱蒼としていた。静かに雨が降り始めていて、湿度は高いが暑くはない。静かでほっとする。ひぐらしが鳴いている。あじさいも、まだたくさん咲いていた。

赤目四十八滝心中未遂』を読み返した。何度目か。精神が疲れているので何も考えたくなくて、逃避のような読書。

東京ではひどく憂鬱でつらかった。移動して、ここで少しは気分が変わるといいのだけれど。