うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

ナウシカ歌舞伎

久しぶりに歌舞伎座に行きました。

歌舞伎を見たのは、コロナ禍以前の2019年末に新橋演舞場ナウシカ歌舞伎昼の部夜の部を通しで見たとき以来。
今回もナウシカ歌舞伎を見に行きました。どんだけナウシカ好きなのか(;^^)ヘ..

歌舞伎座は今までのような昼と夜の二部制ではなく、三部制になっていた。一部の時間が短い。けど楽でいいかも。席でお弁当を食べることはできなくなり、客席はまだ二人おきに間をあけて販売。大丈夫なのか心配になる。大向こうの声もないし、精一杯手を大きめに叩きながら、観ました。

尾上右近さんの口上で始まった今回のナウシカ歌舞伎。そういえば、前回みたあとにラジオ番組で右近さんと電話越しながらお話させていただいたんだった……まさか自分の人生に右近さんとお話するなんてことがあるとは想像もしなかった……と不思議な気持ちに。得がたい経験だったな。

やはりコロナの影響をそこかしこに感じながらも、腐海を表現する舞台美術は前回以上にすばらしかったし、そこにあのテーマ音楽とともに「風の谷のナウシカ」の文字が浮かびあがったときは、前回同様胸が熱くなりました。(ナウシカ好き過ぎる人)

今回一番思いがけなかったのは、王蟲の精が踊る場面で泣いてしまったこと。演じた8歳の尾上丑之助さん、すばらしかったです。王蟲の精を表現するなんて、すごく難しいと思うけど、今の年齢でしかできない踊りだった気がする。目が釘付けに。
王蟲の孤独と、歌舞伎役者の家に生まれた子の特別な時間が重なって、稀有な聖性が発生している感じがした。これからすごい役者になるんじゃ……?それが観られただけでも行ってよかったと思いながら帰ってきた。

それが金曜日。元首相が暗殺された。選挙に大きな影響を与えることになる。最悪。当分SNSはみないことにしてニュースをラジオで聴く。歌舞伎を時々みたり、大好きな夏服を買ったりできるような日々は、いつまで続けられるのかな。

恋発(拙著です)を読んでくださった方々の感想に、ことごとく「なんだか元気になった」みたいなことが書いてあり、救われる。それは予想外のことだった。次作がなかなかうまくいかないが、なんとかしてがんばっていく。