うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

2022年の振り返り

あと一時間半で新年になってしまうので、ごく簡単に今年あったことを思い出せる限り書いておきます。

・2月に新刊の小説が出て、予想以上の反響があったことが最も大きなことでした。すぐに新聞各紙やテレビなどで取り上げていただき、本当に驚いたしありがたかった。
その上、12月には「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」にノミネートされたという知らせをいただき、受賞はかなわなかったけれど、いつか・・・という目標ができました。選考会の様子は『オール讀物』2月号に掲載されるとのこと。まさか2作目も選考対象になるとは予想だにしていませんでした!

・3月末に、NHKラジオ「らじるラボ」の木曜レギュラー出演を終えました。番組始まってすぐにコロナ禍となってほとんどスタジオに行けず、約2年間自宅2階の仕事部屋脇の小部屋を簡易スタジオにして、電話出演していました。電話台をテーブル代わりにして台本を置いて、椅子しか置けないほど狭い通路みたいな場所に座って喋っていたのです。まさかあんな物置みたいな場所から全国に向けてしゃべっていたとは、誰にも想像できなかったでしょう。家族だけがそれを面白がっていました。しかし自分がラジオに、しかも生放送に毎週出ることになるなんて、夢にも思っていませんでした。人生って不思議です。貴重な経験でした。2年間、毎週月曜朝までに台本の元となる原稿を2本書いて送るという生活を続け、担当のスタッフの方は立ち上げから変化しましたが、全ての方に感謝しています。聞いて下さった方、本当にありがとうございました。

「さくらひなたロッチの伸びしろラジオ」には、引き続き短歌の先生として今年も出していただきました。

・夏に引っ越しをしました。これが大変でした…。ラジオを辞めたのはたまたまでしたが、もしあのまま続けていたら絶対無理だったでしょう。

17年暮らした家(三階建て)に、好きなように家具や本など詰め込んでいたため、不要品の処分やら何やらに思っていた以上の時間と労力がかかりました。17年前と今の自分では生活スタイルも考え方も変わっていて(何より仕事が違う)、「いつか使うかも」ととっておいた物のことごとくが、もういらないのでした。要するに、「いつか」なんてもう来ないのです。いやー、本当に大変でした。引っ越しのトラウマで、処分が楽かどうか気になって必要な物さえなかなか買えなくなってしまいました。本をKindleでよく買うようになってしまったのも、引越しのせいです。

引越しが終わったあと、部屋が本の段ボールで天井までぎっしり埋め尽くされて寝る場所しかなかったのはしんどかったです…。引越しお任せパックみたいなサービスで箱詰めはやってもらったんですが、出すのは全て自力だったので、重労働でした。次は絶対本だけは収納まで頼む!!と決意。

・新居は我ながらよく見つけたと思うような、静かでいい場所にある良い家なのですが、これで心機一転いいものがどんどん書けるようになるかというとそんな甘くはなく、引っ越しダメージのせいなのかなんなのかわからないけどメンタル的な何かがうまくいかない感じで困っているところ。書き下ろし一つ終わったけど出す目処がまだ立たず。2作目の評判が良かったおかげで話はいくつも来ているのだが・・・。今こそ願っていた状況なのに、なぜうまくいかない?と絶望的な気持ちになったり。

そんなわけで今年はやるべきことができなかった感じがあり、来年こそがんばりたいと強く思うのでした。

・今年は去年ほどコロナに怯えて暮らしてはいなかったけれど、去年と違った意味でコロナによる良くない影響を年末に至って強く感じ始め、それは欲望ややる気みたいなエネルギーがじわじわ減っていくような感覚で、このままではまずい、と積極的に12月は人に会うようにしました。少しだけど。

本当にしたいことを来年は諦めずに、自分を信じたい。

 

最後に、Twitterにも書きましたが、今年映画館でみた中でよかった10本をメモしておきます。

・ユンヒへ
・春原さんのうた
・コーダ あいのうた
・ふたつの部屋、ふたつの暮らし
トップガン マーヴェリック
・PLAN75
・LOVE LIFE
・あのこと
・ファイブ・デビルズ
・そばかす

「ユンヒへ」は映画館で二度みて配信になってからもう一度みて、いずれも同じところで泣きました。配信でみた中では、「ソウルメイト七月と安生」がものすごくよかったです。もう一度観ると思う。