うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

小堺さん

月曜日のらじるラボにも急に出ることになった。その話が来たのが先週の月曜日。

木曜だけでいっぱいいっぱいなのでどうしようと思いながらも出ることに。だって小堺一機さんがゲストだから。コサキンのヘビーリスナーとしては、小堺さんは特別な存在。お話できるなんて一生に一度の機会だと思って出ることにしました。

そもそも、NHKの朝のラジオ番組に出ませんかという話があって昨年末に初めて顔合わせをしたとき(というかあれはたぶん今思えば面接テストみたいなものだったんだろう)、ラジオは好きですか、と聞かれて私はコサキンを長年聴いていることや、どれだけコサキンが自分の人生を支えてきたか等、コサキンへの思いを熱く語り続けたのだった。他局の番組のことを(^_^; (英語講座やNHKジャーナルや深夜便が好きとかも話したけど)

月曜の台本が数日前に来て、自分の名前もあるけど、小堺さんはきっと、誰この人?という感じだろうなあ、申し訳ないなあ、と思っていた。

毎回木曜のゲストコーナーでもだいたいそう思っている。前回の和合亮一さんは詩人で近いジャンルだからご存じだったけれど、普通は私のことはみんなまだ知らない。短歌なんてそもそも人に知られているものじゃないし。有名な歌人でさえほとんど一般にはは知られていない。まして小説はまだ始めたばかりで、ますます誰も知らない。だからそんなことは当然なのだったが。

本番始まって、前半すごく面白く聞いていた。

「いいとも」の後の番組「ごきげんよう」が始まってしばらく「いつ面白くなるんですか」と言われ、「消えてください」と記事に書かれたこと(衝撃的・・・)。「矢面に立つ」という言葉が心に刺さった。それがどう変えたら良くなったか。その道のりには感じ入ってしまった。コサキンでもテレビの大変さは時々話していらしたけど、今聞くと深くいろいろ思うところがあった。

で、自分の出る後半が始まって、かなり時間が押していたので用意した質問をどう絞ればいいかな、とか考えながら話し始めたら、小堺さんが私のことを知っていると言ったような? 気のせい?と思っていたら、本のタイトルを二冊ともおっしゃった。読みましたよ、という声がしたけどこれは本当に小堺さんの発言??と頭が真っ白で軽いパニックになった。吾妻さんの声で我に返ってお話したけれど。

正直ちょっとびっくりを引きずっていて、ちゃんと話せたかわからない。

小堺さんはたぶん、台本を見て、私のことを調べてくださったのだろう。そして短期間に読んでくださったんだろう。まさかすでにご存じなんてことはないはず。けどサービストークじゃないことはスタッフが後で聞いてくれてわかったし、本番中にもそれは私にはわかった。

たった十数分話すだけなのに。ただのコサキンファントークをするだけで、拙著を読む必要は全くないのに。

こういう裏側の努力が長く有名番組を続けてこられた要因の一つなんだろうなあと感じ入って出番をなんとか終え、続きを聞いていたら、最後に「努力をしたことがない」という話をされていた。努力と思っていない。楽しんでやってきた、だって自分の持っている以上のことはできないし。というような話。ラジオに出るようになってまだほんの一ヶ月半の自分だけど、とても染み入る言葉だった。

正直こういうSNS時代だから失礼なことを言われたりもするし、書く時間が減るとラジオに出てる場合じゃないのではと悩んでしまうことも多々あるけれど。

コサキンに長く支えてもらってきた人生のほんの少しの時間、ちょっぴりでもラジオに恩返しが出来たらいいな。これからもコサキンを楽しみに生きていこう、と思ったのだった。

しかしコサキンソングをかけたり、サイコロトークをするNHK。ラジオはやっぱり自由で良い。

 らじるラボのリンクはサイドバーに貼ってあるので聴き逃しサービスはそちらからどうぞ。一週間聴けます。