うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

光のち

てちの誕生日のある六月が、まもなく終わる。

先週はいろいろ気持ちが忙しかった。

てちの誕生日がラジオの出演日と重なっていることに気づいたときから、折り句でお祝いの歌を作る、というのは決めていたのだが、映画コーナーでもてちの話をするとは思っていなかった。そもそも「櫻の園」をそのために選んだことは誰にも言うつもりはなかったし。しかし国会中継で出演日がずれて、映画も一本ずつずれそうになったため、「25日はかくかくしかじかでどうしても櫻の園をやりたい」旨を伝える羽目になり、結果、「なんでこれ平手さんの誕生日に選んだかちゃんと話してください」的なダメ出しを、意外にもいただくことになったのだった。

えっ話してもいいの?

それならば、せっかくだからオタク友達のみんなにも聴いてほしい、と思って前夜Twitterで宣伝したら、秒で(ほんとに秒で!!)欅のまとめサイト(匿名の欅情報サイト。欅公式サイトより多くの情報がわかったりもするのでよく見る。いらない情報も多いけど)に記事があがってしまい、びっくり。

どうしよー。

矛盾するようだが、私はできるだけてちの視界に入らないようにしたいと常々思っている。てちの邪魔になりたくない。視界に入らないところでも勝手なイメージの押しつけとか絶対したくない。ただでさえ物語のようなものを背負わされてきたわけだから、自分までがそういうことをしたくない気持ちがある。だから、ファンだったら彼女をモデルに小説を書きたくならない?とか聞かれたりもするけれど、それはしたくないし、したいとも思わないのでした。

無意識に似てしまうのは別として(実際『リトルガールズ』を読んだ方から、登場人物の一人がてちっぽいとか言われたこともあるけどそれはいいの、だっててちを知る前に書いたからたまたまなの。解釈は自由だし、そういう感想はすごく嬉しい)。

そんなわけで、知らせるために宣伝したくせに、それが欅のまとめサイトにあがったりするとすごく嬉しいと同時に心配にもなり、動揺したりブルーになったりしてしまうのでした。

もちろんてちが聴くとも思わないしそういうの聴かない人だろうから安心してやっているところもあるんですけれども。

少しでも邪魔になるんじゃないかと心配しちゃうんですよね。

めんどくさいオタク心理です……。 

そんなわけで青ざめつつ、久しぶりのNHKラジオセンターにお伺いして出演にのぞみました。

本番中に突然ニュースが入って中断するなど、生放送ならではのハプニングも初めて経験しつつ、なんとか全て言うことができました。

朝なので欅ファンたちからあまり反応がなく(みんな学校とか仕事だよね)、不安になって「この歌はこういうイメージで~」とかすぐTwitterにつぶやいてしまったけど、あれは不要な後付け解説だったと思う。

光のち雷鳴 あなたの手が夢にリボンをほどく夏のあけがた 

という、「ひらてゆりな」の折り句になっているのだが、

これの作り方をざっくり思い出すと、

まず「避雷針」(という欅坂46の曲がある)を初句に使えないかなと思いついたものの、初句切れにするには座りが悪い言葉だな、そこまで強いイメージの言葉ではないし(物としてもあまりイメージできないし)、とすぐにやめた。そのことが頭のどこかに残っていたせいだろうけど、数日後の夕方に遠雷がごろごろ鳴っていたときに、「光のち雷鳴」という冒頭を書いて、あとはするすると出来上がったのでした。だから「避雷針」の曲のイメージで作ったわけではなかったね。すみませんでした。

なんか動揺していたんでしょうね。

まとめサイトの記事のコメントにあった、これなどを読んで、ラジオ聴いたり歌読んだりしてくださった方の邪魔をしたような心持ちになりました。

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あと、「櫻の園」の私の映画の解釈と、欅の「黒い羊」MVのてちが提案した場面の共通点などを書いている方もTwitterにいて、全くそれは気づかなかったので、すごいなと思いました。やはりあの映画を選んでよかったと思えた。

ちなみに誕生日が終わると共にまとめサイトにあがった記事には、リード文に私の歌を使ってくださって、あと有名人含め本当にたくさんのおめでとうコメントが集められていて、とても愛を感じました。嬉しかったです。 

心配が消えました。

私についてのどの記事も、誰があげたのかわからないけど、ありがとう。