うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

免許とか住処とか

長嶋有さんの『愛のようだ』が文庫になって、解説を書店員の大塚真祐子さんが書いているので買った。冒頭読んでいて、思い出したこと。

私が大学生の頃は、みんなだいたい運転免許を取りに教習所に通っていたが、私は行かなかった。

こわかったからだ。当時たくさん女友だちから聞いた。同乗して指導する教官からの、吐き気のするようなセクハラ話を。今も忘れていない。お金と時間をかけて不快な思いをするくらいなら、免許はいらない、と思った。

今はそういうこと、きっともうないよね?

山の家に行くとき、免許があったらなあと思わないでもないけれど、東京に住んでいる限りは不便は感じない。数年前に家族は車を売ってしまった。たぶんこのまま車を持つことはないだろう。

しかしこうなってしまったからには、東京で暮らす必要もなくなる可能性が高い。週に一、二度、東京まで日帰りできる距離で交通費もそれほど負担にならない場所に、住処を移動して静かに暮らすことも考えたい。

もうそんなに時間がない。この春以来、ますますそう思うようになった。

これまで住む場所はAの仕事次第だと思っていたが、別々に暮らすのもありかもしれない。実際いま、Aとは離れて暮らすことになっている(コロナと他の家族の都合)。大変ではあるけれど、離れているほうがよく話をしている。一緒に暮らさないと家族じゃないってわけじゃないし、そう思い込んでいるAにこの機会にわかってもらえそうな気がしてきたのは、いいことかもしれない。