うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

アンビバレント

てちの誕生日まであと9日。

久しぶりの晴れ。洗濯物を一気に干す。ベランダに出る度、くちなしの甘い香りがする。

午後、2ヶ月半ぶりに図書館に行った。図書館を使えなくなってかなり困っていたから嬉しい。

朝日新聞の、齋藤環さんを取材した「会うことは暴力」という記事を読み、緊急事態宣言解除後に自分の感じていた気の重さがなにゆえか、少しわかった。

そう、ひきこもり生活が実は非常に自分に合っているような感覚もあって、もう外に出て自由にしていいですよ、と急に言われてお店もだんだん開いて、元通り生活していいみたいになっていくことが、良かったと思うと同時に、なぜかとても憂鬱だったのだ。コロナがこわいから、だけではない、ひどく気が重くて何かおっくうな気持ち。

人に会いたくない、あまり動きたくない、と思っていることに、それで気づいた。

なぜ?

あんなに、早く会ってお茶したいね、とか言い合っていたのに。

もちろんそうしたい。でも、したくない。このままみんな引きこもって暮らしていけたらいいのに、という気持ちがあるらしい。

元々自宅で仕事していて基本引きこもっているので、みんなも自分同様引きこもってて安心みたいな気持ちもうっすらあったのは自覚していた。もちろん引きこもる不自由も不安もたくさんあるから、不安と安心が交代のように日に何度も襲ってくるアンビバレント、それは嫌だったから早く自由になりたいとは思っていた。

なのにやっと出かけられるとなると、今度はまた別の憂鬱が襲ってきたというわけで、混乱。

齋藤環さんのnoteを読むと、会うことの暴力性について、さらに詳しいことがいろいろ書いてあって、自分の状態がだいたいわかった(ような気になった)。離人症や時間の感覚のこと(これは私はたぶんラジオ出演がちょうど始まったせいで、大丈夫だったのかも。ストレスも多かったけど幸いだったのかもしれない)なども書いてあった。

昨日のブログに遠くで引きこもって一人で暮らしたい的なことを書いたばかりで、その気持ちがあるのは確かだけれど、あんまり引きこもり続けるのも良くないようだから、様子をみながらラジオのスタジオ復帰は早めにできたらいいなと思う。そう思えるようになって良かった。