うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

今年読んだ本のこと少し

2020年に読んだ本のことを書き忘れていたので、メモ的に。

春に、江國香織『去年の雪』とチョン・セラン『フィフティ・ピープル』を読んだことが一番印象的だった。

この2冊を読んだことで、嵌まり込んでいた場所から脱出したような気がしたから。

大量の人が出てくる2冊。前者には100人くらい入ってるらしいし、後者はタイトル通り50人。こんなに出てきてもいいんじゃん!と嬉しくなり自由な気持ちになったのがよかったんだろう。

 

それで、韓国文学で好きなのほかにないかなあ、と行きあたったチェ・ウニョン『わたしに無害なひと』『ショウコの微笑』もよかった。

 

あと、年末の今に至っていきなり片岡義男にはまっている。

初めて読んだ。かなり偏見があり、すすめられても見向きもしていなかったのだが、少し前に江國香織さんが帯文を書いている同氏の新刊を目にとめて買い(江國帯は滅多にないので必ず買う)、それでもなかなか読まずに放置していた。

今年の夏休みにKindleを片時も離さず本を読みつづけて精神を回復させた時に、大量にセール本をKindleに落としたのだが、その中にあった片岡義男『豆大福と珈琲』をなんとなく最近読んでみたら非常に良くて、直前に読んだ別の作家の話題作にどんよりした(すごいけど今の私には不向きだった)せいもあり、違いがくっきり感じられたのもタイミング的によかった。私はそっちではなくこっちなんだな、みたいな自覚ができた。

で、今は『コミックス作家川村リリカ』をKindleに落として読んでいる。これも大変気に入っている。美女2人がお前とか俺とか言い合いながら会話している。しかも年末年始の話。

年末の短い休み中に、片岡義男のおかげで書けそうな場所に近づいている予感がしている。こういう読書はなかなかできないので貴重。

来年も読み続けよう。