うみゆり日記(新)

錦見映理子の日記です

最近のことなど

『恋愛の発酵と腐敗について』の今後の配信スケジュールを書いておきます。

中巻が10/15(金)、下巻が10/29(金)にそれぞれAppleBooksで限定配信予定です。

楽しみですね!(自分で言っていくスタイル)

中と下を読むのはお金がかかりますが(でも安い!)、上巻だけはしばらく無料なので、とりあえずダウンロードだけでもしていただければと思います。

iPhoneもiPadもMacも持ってねーし!という方は大変申し訳ないのですが、しばしお待ちください。その間に、情報拡散にご協力お願いします。そうすると、読める日が来るかもしれませんので。

あと、紙の本が出るまで待つからいいや、という方もおられるでしょう。うん、私だったらそうするかも。また、Kindleならともかく、スマホで読むのはちょっとな、という方。わかります。めちゃくちゃわかります。そうでしょうとも。

し・か・し!

紙が出るのはいつになるかわかりませんぞ。しかも、今なら無料なんですよ早苗さん。パート帰りにお茶飲みながらスマホで読めますよ。え、早苗さんて誰かって?早苗さんはですね、『恋愛の発酵と腐敗について』に出てくる登場人物の一人で、これは今さりげなく宣伝しようと無理しているんですね。早苗さんは、主人公の万里絵の喫茶店の常連客なの。危なっかしくてさあ、この女が。まったく大丈夫かねって感じなのよ。ちょっと様子みてやってくださいよ。

と怪しい文体になっちゃうほど、お願いしにくいこと山々なわけですが、まあ上巻だけでも落としてくださいね。無料なんで(しつこい)。すぐ読まなくてもいいですしね。

こんな調子で(どんな?)、新作のことも織り交ぜつつ、しばらくはブログをなるべく更新していこうかと思います。

この3ヶ月は、次の書き下ろし小説を書いていた。いま250枚ほど。終わらせるにはあと50枚は必要だが、ここまで来れば終わらせることはできそう。

今月はいったん小休止。別の仕事を一つ終わらせないといけないので。

それと共に、岡井隆に向き合う月にしようと、やっと、昨年亡くなって間もなく特集が組まれた雑誌などを読み始めた。

この1年ずっと読まずに避けていた。
いろいろ読むと、折々涙がにじむのに驚く。亡くなってから、明らかに泣いたことがなかったので。正直、岡井さんがいないということが、まだどういうことかわからない。なんとなく、嘘かもしれない、と思い込もうとしている節もある。しのぶ会までやったのにね。

でもあれは配信だったから。実感することはできなかったと思う。

ただ、しのぶ会が終わったら、急に歌会に出る気力が3、4か月くらいなくなった。なぜかはよくわからない。

小説だけは何があろうとずっと書いていた(または書こうとしていた)。私は小説を書くようになって以来、その時間以外は幸福を感じられない病気にかかっているような感じなので、幸福になりたくて必死だった。うまく書けないとかなり暗い気持ちになってしまうので危ないのだが。

とりあえず、この三ヶ月は書き下ろしにとりかかっていたおかげで概ね幸福だった。うまくいくのかという不安はもちろんずっとあるけれど、予想以上にちゃんと書き進めることができて、しかも今まではできなかった方法で初めて書いているので、なぜできるように?と自分でもびっくりしている。

次に書きたいテーマもぼんやり決まっている。早くこれを仕上げて、次を考えたいな、とわくわくしている(たぶん実際トライしてみたらうまくいかなくてブルーになったりもするんだろうけど)。 

そんなこの頃ですが、今書いているのが出来上がったとしても、本になるかはわかりません。でも、そもそも自分の書くものの運命は誰にも知り得ないものなのだから、そんなことはどうでもいいのです(いや全然よくはないけど)。

大事なのは、いいものを書いていると自分が感じられること。生きていると感じられるのは書いているときだけなので、そうするしかないのです。

もしも書いても全然幸福を感じられなくなったらやめればいい。誰にも望まれていないということは、自由ということでもあるのですから、誰にも認められずに死んでいったエミリ・ブロンテのように、自分だけが自分の書いたものの価値を知っていればいいのかもしれません。

だけど、先週の金曜日に、誰も読んでくれなくても無料だから落としてくれればいいな、とリリースのお知らせして以来、読んで下さった方がぽつりぽつりと感想を呟くのを目にし、今日はレビューが書いてあるのも見つけました。びっくりです。もはや作品は私の手を離れて自分のものとは思えないのですが、それでもうれしい。あの小説の万里絵や早苗さんたちのことを、自分以外の人にも知ってもらえてよかったです。

この数日でいち早く読んで、それを伝えて下さった方、本当にありがとうございます。
書いている時以外にも、幸福はあったんだ。